懐かしさのなかに
執着している人がいる。普段は思い出さないけれど、ダメになりそうなとき、そっと内側からその存在を滲ませる。私はいつかこの人を忘れられるだろうか?
親友も家族も、かつて情の通った一切合切の人間から心を切り離し、みんな他人になった。みんな背景。その時そのようにそこにいたとしても、うつりかわっていくと悟ったとき、愛着やそれに伴う安心感の全てを失っていた。
立ち直ったときに残っていたのは、ひとり。でもそれも、現実の他者でなく、都合よく解釈された虚構の他者。美化した思い出に浸ることでのみ得られる安らぎがある。善悪も真偽もここでは意味がない。
いつか更新されるだろうか?他のものに置き換わるだろうか?土壌や土台を組み替えるには、その上に建っているものを一度取り除かねばならない。記録的な大雨で氾濫した川が全て押し流したからそこをそれで補強したのに、今更どうやって取り外そう。
それとも、時間が解決するかしら?